クマダ ノブヒロ
昭和58年(1983年)4月に山梨大学工学部附属無機合成研究施設に助手として奉職し、クリスタル科学研究センターに名称変更になったものの同じ建物で令和6年(2024年)3月に定年退職しましたので41年間お世話になったことになります。この間に学位取得、助教授、教授への昇任ばかりでなく、評議員5年、工学域長3年、理事・副学長2年を仰せつかり、大学運営を微力ながら担わせて頂きました。この41年間に自身が所属していた無機合成研究施設がクリスタル科学研究センターに改組され、工学部も平成元年(1989年)に四学科制(機械システム工学科・電子情報工学科・土木環境工学科・化学生物工学科)となり、さらに平成24年(2012年)に生命環境学部の設置に伴う改組が実施され、100周年を迎える令和6年(2024年)には一学科制に改組されます。組織改編だけではなく建物にも変化がありました。甲府キャンパスにはT1号館、総合研究棟およびS3号館が新営され、応用化学科が総合研究棟に移転し、生命工学科および環境システム工学科が生命環境学部に移動するとともにS3号館等に移転しました。この時に循環システム工学科は地域社会システム学科に改組されました。
歴史を振り返ってみると世の中は科学技術の発展に伴って変化してきました。この半世紀では半導体技術の発展によりICTの普及が世の中を劇的に変化させ、さらにAIによる大きな社会変革が起きようとしています。大学には人材育成と科学技術の発展を先導する役割があり、工学部は直接的にその役割を担っています。そのような意味では工学部は社会の変化とともに改組・改編を行うことは必然かもしれません。100周年を迎えた山梨大学工学部の改組が社会に貢献できることを期待しています。
さて、無機合成研究施設は昭和37年(1962年)に人工水晶の合成の成功を機に設立されました。そのレガシーを引き継ぐべく人工水晶の合成法である水熱反応を用いた研究を長年行ってきました。残念ながら人工水晶のように社会基盤となるような研究成果をあげることはできませんでしたが、水熱反応でしか合成できない新しい無機化合物を多数見い出すことができ、無機化学における基礎データの蓄積に僅かに貢献できたのではないかと思っています。山梨大学工学部には人工水晶以外にもスカラロボットや燃料電池などの誇れるレガシーがあります。これらを礎に次の100年に向けてさらに発展していくことを祈念しています。
山梨大学 名誉教授