山梨大学工学部

卒業生・修了生

人生の転機 ー 工学部への入学と研究室配属 ー

佐藤 元樹

サトウ モトキ

 工学部創立100周年を迎えられたこと、誠におめでとうございます。今回寄稿させていただくこと、光栄に思うと同時に大変恐縮しております。私は1999年に電気電子システム工学科に入学してから、途中社会人の経験を挟み、2013年に機能材料システム工学専攻で博士の学位を取得するまで長い間山梨大学にお世話になりました。今回寄稿の機会をいただいたのは、誰にも負けないくらい長い期間、学生としてお世話になったということもあるかもしれません。
 さて、私は半導体シリコンウェハメーカーからメモリメーカーを経て、今年の2月から故郷であり母校のある山梨に戻り、同じく半導体の生産技術エンジニアとして新規工場の立ち上げに従事しています。社会人となって以来、半導体のエンジニアとして働いており、この人生を決定づけたのは山梨大学工学部への入学と研究室配属であったと言えます。入学を志望した動機は、小学校の時に父が買ってきたNEC PC-9801でプログラムを書いて遊んでいたことや、NHKで放送された電子立国やその続編を見て、漠然とですが、エレクトロニクスのエンジニアになりたいと考えたためです。しかし、入学したのは良いものの、1年時は座学が中心であり、中々苦労した覚えがあります。線形代数学で固有値や量子力学で電子の離散的なエネルギーの概念を学ぶこと、そして、電磁気学の講義で課せられた「ファインマン物理学」の巻末問題を解くことには何の意味があるのか、などと疑問に思いながら、同期の学生と課題をこなしつつ過ごしてきたと記憶しています。この疑問に対しては、研究室配属後の研究生活で答えが出ました。これらは研究を行っていく上で基礎となる素養や準備となり、実験データの解釈や、そもそも実験系の思案や構築に必要であることを痛感しました。2002年の研究室配属では、どの分野に進むかを悩んでいたのですが、研究室に一緒に入ることになる布留川君に声を掛けられたのを切っ掛けに、工学部附属クリスタル科学研究センター(現:大学院総合研究部附属クリスタル科学研究センター)の中川・有元・山中研究室へ配属となりました。研究室は初の学生の受け入れだったこともあり、環境の立ち上げからのスタートでした。研究は、半導体材料であるSiGe混晶の電気伝導特性についてであり、実験方法の思案から、測定系の立ち上げ、そして学会・論文発表までの試行錯誤した経験は、その後の半導体エンジニアとしての基礎となったと思います。声を掛けてくれた布留川君と、後に同じく博士課程へ進む三井さんと共に、先生方の指導の下で濃密な研究生活を送りました。皆様には本当に感謝しかありません。学生生活を過ごした山梨へ戻った今、学び続けるという思いを新たに、エンジニアとして地域に貢献できればと思っております。
 最後に、山梨大学、そして工学部と関係する皆様の益々のご発展をお祈り申し上げ、メッセージと代えさせていただきます。

2003年工学部電気電子システム工学科卒業、2005年大学院修士課程修了、2013年大学院博士課程修了

ルネサスセミコンダクタマニュファクチュアリング株式会社 勤務