イリエ ヒロシ
私は2009年2月に、クリーンエネルギー研究センター教授として赴任してまいりました。それから遡ること約1年、2008年3月に本学甲府キャンパスで開催されました電気化学会第75回春季大会参加のため、初めて山梨大学を訪問する機会を得ました。まさか、1年後に赴任することなど、そのときには夢にも思いませんでしたが…。学会当日は快晴、非常に気持ちのよい朝で(花粉が少々気になりましたが)、前泊した甲府駅近くのホテルから甲府キャンパスまで歩くことにしました。武田通り沿いの満開の桜を愛でながら一本道を歩いたのを鮮明に覚えています。学会での発表や懇親会についてはまったく覚えていませんが、まっすぐ続く武田通り、真っ青な空と満開の桜、その一瞬の情景がポストカードの写真のように私の心の中に記憶されています。それ以来、武田通りの桜が満開になるたびに、初めて本学を訪れた日を思い出します。
さて、本学に赴任してからは、センター教員として研究と教育に従事してまいりました。研究では水素社会実現、カーボンニュートラル社会実現に向けて人工光合成の研究を推進してきました。天然の光合成から学び、太陽光をエネルギー源に二酸化炭素と水から水素、一酸化炭素、メタンなど有用物質を合成する研究です。教育では学部では応用化学科、クリーンエネルギー特別教育プログラム(現在は終了)、大学院では応用化学専攻(コース)やグリーンエネルギー変換工学特別教育プログラムの講義を担当してまいりました。特に文部科学省リーディング大学院プログラム「グリーンエネルギー変換工学」やその後継である卓越大学院プログラム「パワー・エネルギー・プロフェッショナル育成プログラム」において高度人材育成に一役を担ってまいりました。また、2024年度新設の工学部工学科クリーンエネルギー化学コース設立にも関わり、担当することになりました。山梨大学工学部が今まで積み上げてきた伝統を引き継ぎ、100年後に向けて一層発展した山梨大学工学部を創り上げていく所存です。皆様のお力添えをいただけますようお願い申し上げます。
山梨大学大学院総合研究部工学域 物質科学系 教授
クリーンエネルギー研究センター センター長