山梨大学工学部

教職員

私を導いてくださった工学部

金久保 千綾(旧姓:山本)

カナクボ チアヤ

 この度は、山梨大学工学部創立100周年を迎えられましたこと、心よりお祝い申し上げます。また、このような貴重な執筆機会をいただき心より感謝申し上げます。
 私は現在、山梨大学工学部附属ものづくり教育実践センターにて技術職員として勤務しております。今から18年前の2006年、当時機器分析センター長の松本俊先生(現;富士電機パワーデバイス講座特任教授)とのご縁あって、山梨大学機器分析センターの非常勤技術補佐員(3年間)として着任しました。同センターでは無機材料系を対象とした透過型電子顕微鏡(TEM)関連の学内受託分析、装置保守管理業務を担当しておりました。
 実は着任前の仕事は、電子顕微鏡とは全く無縁の仕事をしており、装置自体見たことも触ったこともなく、何の知識もない状態で転職してきました。そんな無知な私の指導係として、当時から電子顕微鏡技術相談員であった山中淳二先生(クリスタル科学研究センター)に、基礎の基礎から丁寧に根気よくご指導していただきました。きっと、当時の山中先生はこんなにも無知な人が電子顕微鏡の担当になることが決まり、とんでもなく不安だったと容易に想像がつきます。
 初めから複雑な電子顕微鏡を習得することはハードルが高かったので、まずイオンミリングによるTEM試料調製を担当することとなり、その後FIB(集束イオンビーム)、TEM、STEM(走査透過電子顕微鏡)、FE-SEMと一歩一歩任されるようになりました。試行錯誤の連続ではありましたが、日常生活では見ることのできないナノメートル、原子レベルでの微細構造の世界を目の当たりにできることは、とても面白く、非常にやりがいを感じました。
 また、電子顕微鏡の奥深さを実感してくと同時に、操作する本人が分析試料の中身を理解しておかなければよいデータを出せないとの思いから、試料提供してくださった研究室のゼミに参加し、当時の学生の皆さんとともに多くの勉強をさせて頂きました。中でも中川清和先生・有元圭介先生・山中淳二先生(クリスタル科学研究センター)の研究室の皆さんには、まるで研究室の仲間であるかのように受け入れてくださり、親睦会や伊豆研究室旅行まで参加させていただきました。この技術補佐員時代の経験が、現在の私の礎を築いてくれたといっても過言ではありません。
 工学部附属ものづくり教育実践センター技術職員に着任後は、技術補佐員時代から続く機器分析センターの機器管理業務に加え、学生実験や実習業務等、多くの学生との関わる仕事に携わっております。微弱ながら、この伝統ある工学部の礎を担うべく立場になり日々身が締まる思いです。100周年という伝統ある工学部は、諸先生方、多くの卒業生、あとに続く学生により、さらに飛躍を遂げて行くことと信じております。学び続けるという思いを新たに、技術職員の立場から今後も貢献できればと思っております。

山梨大学工学部附属ものづくり教育実践センター 技術専門職員