ヨシカワ マサノブ
この学部に着任してから37年となります。その間の改組により、私の所属する学科(コース)名は「計算機科学科」、「電子情報工学科(Iコース)」、「コンピュータ・メディア工学科(Fコース)」、そして「コンピュータ理工学科」と変遷してきました。そして今回の改組を迎えます。工学部創立百年という節目にあたり、この間のコンピュータ科学分野の進化と学科における教育の歩みを簡単に振り返り現在の展望への短い私見を述べさせていただきます。
まず挙げられるのが、黎明期だったインターネットへの学科としての参加から大学としての参加という発展です。ネットに流れる情報が文字ベースから複合データに進化するのと並行して、学科専用教育計算機システムの環境はCUIからGUIへと進化しました。一方でUNIX系の基本OSは一貫して選択されています。
コンピュータの基盤技術および情報環境の変化と継続とが共存する環境の下で、私たちは柔軟かつ革新的なカリキュラムの構成と実施を試みて「単にパソコンに詳しい人」ではなく「コンピュータ科学・コンピュータ工学の活用と発展とを行う人材」を産み出すことを続けてきました。
近年の変化に生成系AIの一般化があります。たとえばこのようなメッセージ原稿でも、中途半端な要求を入力するだけでネットワーク上の頭脳が「解答のようなもの」を提供してくれます。溢れるデータの進化に、従来の情報技術が圧倒されがちな現在です。私たちは、その進化の下で「単にネット利用に詳しい人」ではなく、情報倫理の観点を持ちつつ「問題発見や要求分析や新しい価値創造を行う、未来を切り開く人材」を産み出すことに力を尽くしたいと考えます。
山梨大学大学院総合研究部工学域 電気電子情報工学系 助教